江戸時代の煮炊きスタイルの変遷|かまど・食材・調味料・文化背景まで

江戸時代の一週間の献立を再現してみよう[1]

~庶民の台所から見える、素朴で滋味深い日々~

現代のように冷蔵庫も電子レンジもない時代、江戸の人々はどのような献立で日々を過ごしていたのでしょうか?

今回は、江戸時代中期〜後期にかけての庶民の一週間の食卓を、再現レシピとともにご紹介します。

味付けはシンプルですが、旬を活かし、出汁を効かせ、工夫に富んだ食生活が見えてきます。

 

 献立の特徴(庶民編)

  • 基本は「一汁一菜」または「一汁二菜」。
  • 主食は麦飯・雑穀飯・玄米飯
  • 動物性タンパク源は少なく、豆・乾物・小魚・野菜が中心。
  • 同じ煮物を翌日も食べて味をしみ込ませるなどの工夫も。

 

江戸庶民の食卓、一週間の献立

【月曜日】

麦飯、味噌汁(大根と油揚げ)、切干大根の煮物

  • 出汁:煮干し+昆布
  • 味噌:自家製の赤味噌風(濃く、しょっぱい)
  • 煮物は前夜から煮ておいた切干大根、にんじん、油揚げを再加熱。

「乾物の戻し汁」も煮物に使うのが江戸流。

 

【火曜日】

玄米飯、すまし汁(菜っ葉と生麩)、焼き味噌

  • すまし汁には煮干し出汁+薄口醤油(あるいは塩)
  • 焼き味噌:味噌に山椒やネギを練り、竹串につけて焼く。

忙しい朝は「焼き味噌+飯+汁」の三点セットで十分。

 

【水曜日】

雑穀飯、味噌汁(じゃがいもとねぎ)、豆の煮物(黒豆or金時豆)

  • 味噌汁には乾燥じゃがいも(保存食)や根菜を活用。
  • 豆は甘くなく、塩味と少しの酒で煮含めるのが本来の江戸風。

「甘くない豆の煮物」は現代とは逆で、当時は常識。

 

【木曜日】

麦飯、味噌汁(かぼちゃ)、青菜のおひたし

  • 青菜:小松菜、菜の花など季節のものを湯がいて、塩・酢で味付け。
  • 味噌汁の具は、煮崩れるかぼちゃをあえて使い、体を温める工夫。

旬の野菜を「汁の具」として最大限活かす。

 

【金曜日】

玄米飯、酢の物(わかめと胡瓜)、干物焼き(いわし)

  • 干物は保存がきき、少しあぶって香ばしく食べる。
  • 酢の物は酢+塩のみ(砂糖は使わない)、少し味噌を加える地域も。

「節約日」でも栄養は意識されていた。

 

【土曜日】

雑穀飯、味噌汁(里芋)、煮しめ(大根・こんにゃく・ごぼう)

  • 里芋のぬめりを活かした味噌汁。
  • 煮しめはまとめて作り、翌日も食べる。

「煮しめ」は江戸庶民の定番おかず。

 

【日曜日】

白米(祝い飯)、赤出汁(なめこ)、さつまいもの甘煮

  • 晴れの日は白米や赤出汁。
  • 甘煮も、砂糖ではなく甘酒や干し柿の戻し汁でほんのり甘く。

当時の「贅沢」は、今よりずっと慎ましくて優しい味。

 

 江戸の食卓を再現するコツ

 

  • 出汁は煮干し・昆布・干し椎茸で。
  • 砂糖を使わず、自然な甘味(甘酒・干し柿・さつまいもなど)を活用。
  • 「冷蔵保存」の代わりに、翌日に再加熱して味をしみ込ませる
  • 漬物・味噌・干物・乾物を活用すれば、無駄なく豊かに。

 

江戸レシピ的考え方

江戸時代の食事は、一見地味ですが、実は体にやさしく、環境にもやさしい江戸時代のレシピが多いようです。「もったいない」を実践しながら、旬と発酵の力を大切にする暮らしです。私たちの台所でも、ちょっとだけ江戸の知恵を取り入れてみませんか?

 

たとえば、

今日は一汁一菜で」「味噌を主役にしてみよう」――

そんな一歩が、きっと体と心をととのえてくれます。

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